take_index.gifIWS2006全体報告

IWS2006コーディネーター/国際基督教大学教授 加藤恵津子
【CGS News Letter007掲載】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

iws2006.png  2006年10月6日から8日にかけて、CGS/COE共催の第3回国際ワークショップがICUにて開催された。今年のサブテーマは「アジアにおける〈身体の知〉とジェンダー」。過去2回のワークショップはそれぞれ社会科学と人文科学の視点から企画されたが、今回は自然科学の視点からジェンダーというパースペクティブの可能性を探ることを目指して、台湾、ベトナム、タイ、マレーシア、インド、日本から、性教育コンサルタント、助産師、助産学研究者、医療人類学者、医療社会学者、科学史・科学哲学者といった、実践家から理論家までを幅広く含む「身体の知」の専門家が集った。

 西洋近代に発する自然科学的視点を無批判に前提とするのではなく、逆に、アジア各地においてそれが、出産や妊娠・避妊などをめぐって、他の知識や技術とどのように葛藤・共存しているかを論じ合う場とすべく、今回は特にフリーディスカッションの時間を発表と同じ長さだけ設けるなどの工夫をした。二日半の発表と活発なディスカッションを通して浮かび上がったのは、西洋型の近代医療の設備をより多く持つ国と持たない国の差、また一国の中での地域差はあっても、西洋型近代医療はアジア各地の女性と男性に、恩恵と困惑の両方をもたらしているということであった。台湾の男性にとって近代的不妊治療は、家父長制からくるプライドとの葛藤を生み、タイ高地少数民族への家族計画の教育は、農作業や、先祖を祀る風習との葛藤を生む。日本における妊娠・出産・臓器移植をめぐる医療技術は、身体の主である人間、特に女性自身に疎外感を与えかねない。このような状況下で、たとえば日本発の助産術は、ベトナムや日本において、女性が自分の身体への主体性を取り戻す上でどのように有益なのか。また、インドでの同性愛者を含む多様な人々への性教育、日本での男性への性教育といったチャレンジングな試みは、どのような形で近代医学の知識を活用する時に成功するのか。異なる国の、異なる専門分野を持つ、普段出会うことのない人々が一堂に会することで、異なるトピック間に新たな関連性が生じ、また新たな課題が明るみに出された。
 これまでに引き続き今回のワークショップも、アジア各地のジェンダー関連専門家のネットワーク作りの場として位置づけることのできるものだが、しかし最後の総括セッションで、皆で「宿題」としてこれからも考えようと結論付けたように、「アジア」という「くくり」がどれほど、またはどのような場合に有効か、ということは常に問い続けられねばならないだろう。このワークショップ・シリーズは、ジェンダー研究における欧米中心的な〈知〉の体系に批判的であろうと、便宜上「アジア」というくくりを選んだが、それは決して「アジアという実体があるはずだ」とか、「アジアに共通する思想があるはずだ」という単純な仮説の検証(まして「日本がその探求のリーダーになるべきだ」などという態度)につながるべきではない。
 2007年度にはこれまでの成果の統合から何が生まれるかを見るために第四回国際ワークショップを開催する予定だが、そこであらためて社会・人文・自然科学的視座の統合に加え、「アジア」というくくりが一体どのような実りを生むのか(あるいは生まないのか)が問われるだろう。

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